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平和あっての花火

2019年10月5日
 戦国時代が終わると武士のある者は砲術の知識を基礎として花火研究に心血を注いだ。一方、庶民は手持ちの吹き出し花火を発展させていく。日本の打ち上げ花火は武士と庶民の技術が融合してできあがった。

 打ち上げ筒から発射と同時に、導火線に着火された花火玉は上空で「星」と呼ばれる火薬玉を放出することで光の造形となる。単純に見えて実は繊細な仕掛けだ。太平の世だった江戸期に進化した日本の花火は平和の象徴といえる(新井充監修「花火の事典」)。

 夜空に一瞬、輝き消える花火を美しいと思う気持ちはどこの国、どの民族も同じらしい。北朝鮮でも折々に「祝砲夜会」と称した花火大会が盛大に催される。残念なのは平和を危うくするミサイル打ち上げがやまず、まるで花火代わりに国威鼓舞に利用されていることだ。

 海面を突き破って他国の空に向かって飛んでいく飛翔(ひしょう)体は苦しい暮らしを強いられている大多数の庶民の目にどう映っているのだろうか。武力に頼る北朝鮮が2016年以来の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射実験を行い、わが国の島根県・隠岐諸島沖の排他的経済水域(EEZ)に落下した。

 米朝首席代表が接触し中断していた非核化交渉も再開したとみられる。北朝鮮はSLBMも取引材料にする構えだろうが、妥協せずに対応してほしい米国である。願わくばミサイルも核も無用になる時代の幕開けを祝う花火が夜空を彩る結果になってほしい。

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