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波間の音符

2019年9月15日
 歌人の観察力、想像力には恐れ入る。きのう開催された俵万智さんのトークイベントに合わせて、本紙が募集した短歌で大賞に相当する「俵万智賞」に選ばれた四位久美子さんの作品を読んだときの感想だ。

 小欄を執筆するための取材で、サーフィンの世界選手権「ワールドゲームス」の開幕前に宮崎市の木崎浜を訪れ、大会本番に備える選手たちの練習を見学した。四位さんと同じ風景を目の当たりにしながら大賞になった作品のような発想はまったく浮かばなかった。

 「空の青映す波間にサーファーは音符となりてメロディー描く」。確かに波は五線譜でサーファーは音符のようだった。バンドを組みベースギターを弾いていた同僚も同感と言い、社内の喫茶店で表現について語り合ったのは短歌から学べることが多い、と考えたからだ。

 ちなみに一本の線から始まった楽譜は、バロック時代にはほぼ現在のものと同じになったという。面白いことに詞の内容が一見しただけで伝わるように「白い天使」という言葉には白い音符を用い、「十字架」の場合は遠目から十文字になるよう音符を配列した(青島広志著「クラシック質問帖」)。

 「波」と分かる音符の動きもあった。それがどんなメロディーだったかは想像もつかないが、むかしの作曲家が譜面の見た目に苦心していたとは意外である。ただし楽譜の草案者も予想しなかっただろう。後の歌人が波と人を五線譜と音符になぞらえるとは。

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