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私たちが見る星

2019年9月6日
 アイヌは北極星をチヌカラノチューと呼ぶ。私たちが見る星という意味だ。先祖は、動かないこの星を見て自分の位置を確かめたのだろう。サケはシペといい主食のこと。アイヌ民族にとって大切なものだ。

 アイヌ民族で初の国会議員になった萱野茂さんは父とサケ漁に行き、夜空を見上げて星の名前を教わった。その日に食べる分だけを捕り、保存用に産卵後のホッチャリを集めた。サケを減らす漁は絶対しなかった(萱野茂著「妻は借りものアイヌ民族の心、いま」)。

 北海道紋別市の川で、アイヌ民族の男性が道の許可を得ずにサケ十数匹を捕獲した。道職員が制止したが男性は「サケ漁をするかどうかは自己決定権」として決行した。4月に成立したアイヌ施策推進法は、アイヌを「先住民族」と明記したが先住権は規定されなかった。

 「アイヌ民族とサケ」を「日本人とクジラ」に置き換えると立場、主張がわかりやすい。「一頭の鯨で七浦賑(にぎ)わう」とされ肉、皮はもちろん骨、内臓まであますところなく利用してきた日本人。食糧難で全滅の危機に陥った集落が漂着したクジラの死骸のおかげで救われたという史実もあると聞く。

 獣、魚の「捕る権利」を保障されているカナダ先住民族は、アイヌがサケを自由に捕れない現状を知ると同情と驚きのまなざしを向けるという。7月から再開された商業捕鯨を理解してもらうためにはどうするべきか。世界の目が「日本の判断」を見ている。

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