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村社講平がくれた感動

2019年8月18日
 イベントでよくある抽選会。当選者が名乗り出ないと再抽選へ。はしゃぐのははしたなくても、内心「やった!」と歓声を上げるのが人情だ。今そんな抑えきれない期待と喜びを抱いている人は多いだろう。

 開催まで1年を切った東京五輪・パラリンピック。チケット販売の「追加抽選」受け付けは明日までだ。1次抽選で1枚も当たらなかった人が対象だが、周囲にはリベンジを期す人が大勢いる。観戦したい欲求に関しては本県もしっかり盛り上がっているようだ。

 五輪への関心は、過去の大会で活躍した名選手の強烈な印象が引っ張ることが多い。95歳・現役作家の佐藤愛子さんの場合、鮮烈に記憶に刻まれた選手が「いだてん」で知名度の上がった女子陸上の人見絹枝と1936年ベルリンで活躍した陸上の村社講平だったという。

 村社は宮崎市出身。5000メートル決勝で4位だったが、佐藤さんはエッセー「昔のオリンピック」の中で、その健闘と日本中の興奮を述懐している。庭に来た植木職人たちが「これこそ武士道や」「負けるが勝ちや。村社は勝ったんや」と盛り上がり、子供の佐藤さんも感動と悔しさがこみ上げたという。

 近頃の五輪には「血がたぎらない」という佐藤さんだが、どの競技でも熾烈(しれつ)な代表選考に触れれば関心がよみがえるのではないか。本番はまた生の迫力にあふれている。追加抽選に県内から多数当選して、土産話でその感激を広めてくれることを祈っている。

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