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アポロ着陸船の脚

2019年7月19日
 「アポロ11号」が月の「静かの海」に着陸した日からあすで50年になる。「小さな一歩だが大きな飛躍」は人類として初めて月面を歩いたアームストロング船長の第一声だ。

 翌年の大阪万博でアポロ関連の展示が複数あったが最もジョークを効かせたのがカナダのケベック州館。着陸船の脚に「月に1番乗りしたケベック。着陸船の脚はケベック製」と注釈を付けた(橋爪紳也著「絵はがき100年 近代日本のビジュアル・メディア」)。

 日本政府による半導体材料の輸出規制強化に対し韓国は撤回を求めて徹底抗戦の構えを崩さない。事務レベル会合後に、双方の担当課長クラスが記者会見などを開いて相手国の説明を否定し合う泥仕合の様相を呈し、不信感が強まった。

 強がりなのか、はたまた本気で国産化を進めるつもりなのか。文在寅(ムンジェイン)大統領は規制強化措置を巡り、韓国企業が日本への依存から脱して技術の国産化を進めることで「結局は日本経済に、より大きな被害が及ぶことを警告しておく」と大統領府での会議で述べた。

 米国が国家の威信をかけたアポロ計画のかなめ、月面着陸船の脚を隣国カナダのケベック州製にしたのは、おそらく自国製より信頼度が高くミッションの成功率を高めるためだったのだろう。メンツにはこだわらない賢明な選択だった。

 泥仕合の着地点はどこになるのか。月にはアポロ11号とほぼ同時間帯にソ連のルナ15号が軟着陸に失敗した「危機の海」もある。不毛の対立が続けば静かの海にはたどり着けまい。和解のための「小さな一歩」が限りなく難しい日韓である。

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