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海の近くは少数派

2019年7月15日
 作家の故・辻邦生さんがどこかで書いていたが、東京の自邸へフランス人の友達が遊びに来たときに「テラスから海が見えるよ」と言ったら、その友達が大変驚いたそうだ。

 「東京ってそんなに海の近くなのか」という驚きだった。「そう言われると、世界の首都はあまり海に面していない」と辻さんは記している。なるほどそうか、と思って手元の地図帳で調べてみたら、確かに世界の主要都市で海に面しているのは少数派といえる。

 パリやベルリン、マドリードは相当内陸部だ。ロンドンやローマも川を上って引き込んでいる。欧州では、城壁に囲まれた自治都市が発展した歴史的な経緯からして防衛上、海からの侵攻を避けるために内陸へと向かった、と推測した。

 島国の日本では海沿いの平野部に人口が集中したと考えられるが、朝鮮半島や台湾ではあてはまらない。平壌やソウル、台北は中国の北京同様に海から離れているからだ。アジアでも、やはり海からの脅威が都市の成立過程に大きく関わっているのかもしれない。

 日本国内でも、海がある県なら多くは県庁所在地が海に面する。宮崎市もそう。本県と熊本県の県境にそびえる市房山に登ると、天気が良ければ宮崎平野越しに太平洋が望める。山間部からの意外な近さに、海の存在の大きさを感じる。

 武力的な脅威は少なかったかもしれないが、沿岸部の都市は今、沖合から来襲する巨大津波への備えに迫られている。今日は海の日。海の近くに住んで漁業、物流、水運、憩いなど享受してきた恵みを反すうしながら海辺を歩いてみたい。

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