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銃口の向かう先

2019年6月19日
 千里山、関大前、箕面の山中…。以前近くに住んでいたので、なじみのある地名が次々と飛び込んでくる。大阪府吹田市の交番で巡査が刃物で刺されて拳銃が奪われた事件。

 犯行現場に近い住所に親族もいるので、第一報から何度も連絡を取って安全を確認した。大阪府警から「外出を控えて施錠を」「怪しい人物を見かけたら一報を」という内容のメール配信があって、その日は自宅から一歩も出ずに緊張した一日を過ごしたという。

 丸1日かかって容疑者の身柄が確保されて、推定される足取りが載っていた。本人も土地勘があったらしいが、結構な距離を移動している。すべて徒歩ではないだろうが、通過した土地の住人や商店主らは胸をなでおろしたことだろう。

 治安の維持のために所持を許されている警察官の拳銃。正義の武器が一転”怖い凶器”になる。決して奪われないように一段と厳重な管理を求めたい。重体の若い巡査には厚い同情が寄せられている。それほど警察は治安の番人として親しまれている存在なのだ。

 国家の機構の一部にあって警察が高い信頼性を維持しているのは、民主的な政治体制を日本が構築できているからだろう。独裁的な国家では、警察や軍隊など武器を所持する組織がしばしば政権を守る方に機能して、国民に銃を向ける。

 香港で中国本土への容疑者引き渡しを可能にする条例改正案に若者らが大規模な抗議行動を起こしたのは、権力維持へ強権を発動する体制に組み込まれることへの反発だ。民主主義の手間は惜しんではならない。銃口の向かう先を思えば。

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