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星守る犬

2019年6月14日
 「犬は憐(あわ)れだ。遊んでやるふりをして鼻づらにボールをぶつけても瞳に非難の色を微塵(みじん)も宿さず、今のゲームのルールがわからないんです僕、という表情で私を見ていた」。

 村上たかし著「星守る犬」に出てくるケースワーカーの独白だ。回想するのは少年時代に飼っていた犬のこと。行き倒れた男の足元で死んでいた犬のなぞを解こうと有給休暇の旅に出て、行き倒れた男がリサイクルショップで家財すべてを売り払った理由を知る。

 犬猫へのマイクロチップ装着を、ブリーダーなど繁殖業者に義務付ける改正動物愛護法が参院本会議で成立した。捨て犬、捨て猫を防ぐためでマイクロチップ義務化は公布から3年以内に施行される。一般の飼い主は努力義務にとどまる。

 インターネットに虐待動画を投稿するケースが後を絶たないため、ペットの殺傷に対する罰則を現行の「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に引き上げる。生後56日以下での犬猫の販売も禁止する。

 行き倒れの男が全財産を処分したのは犬の手術代のためだった。事実を知ったケースワーカーは考える。「私は、私の犬に何をしてやったか。もっと遊んでやればよかった。気の済むまで縁石や電柱のにおいをかがせてやればよかった」。

 飼い方のルールを知らない人間のための法改正である。どんな仕打ちをされてもルール違反とは訴えない動物たちだ。一度飼い始めたら責任を持ち寿命が尽きる日まで飼う。捨てるなど言語道断だ。当たり前のルールを守る人でありたい。


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