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チーターとプロングホーン

2019年6月12日
 陸上動物で、最も速く走れるのがアフリカのサバンナにいるチーターだ。5秒で最高速度の時速120キロまで加速できる。それでも狩りの成功率は平均50%ほどだとされる。


 なぜならライバルの草食獣たちもかなり速く走るからだ。身を隠す茂みの少ないサバンナでは、肉食獣も草食獣も生き残るために、より速く走る方向へ進化を続けてきた(文・絵千崎達也「図説ホントにすごい!生き物の図鑑 地球生物・生き方コレクション」)。


 陸上短距離のサニブラウン・ハキームさんが7日、米国テキサス州で行われた全米大学選手権100メートル走で9秒97をマーク。これまで桐生祥秀さん(日本生命)が日本人初の9秒台として持っていた9秒98の日本記録を0秒01更新した。


 さながら航空機の世界のマッハの壁のごとく日本人スプリンターの前に立ちはだかってきた「10秒の壁」である。それを短期間で2度も超えてみせた逸材だ。桐生さんとともに来年の東京五輪でリレーだけではなく短距離の個人種目でメダル獲得の夢がふくらんだ。


 追われる側のスピード王は北米大陸に生息するプロングホーン。牛に近い草食獣で最高速は時速88キロに達する。チーターはかつて同大陸にいたことが分かっていて類いまれな走力はプロングホーンを捕らえるため発達したと考えられる。


 「次はチャレンジャーとしてハキーム君の日本記録に挑戦していきます」。追う立場になった桐生さんの言葉。共進化で走力を磨いた動物たちのように日本の陸上短距離陣が成長すれば新国立競技場に日の丸が揚がる夢は、きっとかなう。


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