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火の原点

2019年6月3日
 ギリシャ神話から抜け出てきたような女性の手でオリンピックの聖火がともされる。熱源は太陽光。4年に1度行われる、おなじみの儀式だ。採火の仕組みはいたって簡単。

 凹面鏡で太陽光を一点集中させて、そこにトーチをかざす。最近、科学好きの友人から面白い話を聞いた。太陽の中心部で作られる光の赤ちゃんはすぐ外へ放出されるわけではない。高温、高圧の層に封じ込められ、数万年から数十万年もの間、内部にとどまる。

 わが国の神話では、火はまず危険なものとして登場する。イザナミは産み落とした火の神ヒノカグツチの炎で重度のやけどを負いその傷がもとで死んでしまう。イザナギは妻の死を嘆き悲しんでカグツチの首を剣で切り落としてしまう。

 東京五輪聖火リレーのルートが発表された。本県は高千穂町を起点に12市町を通過する。高千穂神社や日向市の大御神社、宮崎市の青島など日本神話ゆかりの地をギリシャ神話に由来する火がひた走る。本県の魅力を世界に向けて発信するよい機会になるだろう。

 数万年から数十万年かけて太陽の内部を脱した光が宇宙空間に飛び出して、地球に届くらしいのだがその説が正しければ私たちが目にしている光ははるか太古の核融合でできたことになる。その頃、人類の祖先は火を何に使っていたか。

 闇を照らし、暖を取る。安心して暮らすための火だったはずだ。少なくとも軍事などへの利用はずっと後々のことである。来年4月26、27日は本県のどこかの沿道で通過を見守りたい。浮かれる心を少し抑え火の原点のことを考えながら。

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