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耳をすまして

2019年6月1日
 障害のある子どもたちについて書かれた古い本が、わが職場の書棚にある。戸川行男著「特異児童」。太平洋戦争敗戦から日が浅く国民は食うや食わずだったころの増補版だ。

 ページは黄ばみ旧字体で読みづらい。序文を一読するだけで障害のある子らの置かれた状況が分かる。「今の世に誰が障害児の生存権を主張してくれよう。今年になって潤次郎と繁が死んだ。悲しいが闇米は買ってやれぬのである」。声なき声は黙殺された時代。

 そんなのは大昔の話と言い切ることができるのか。障害のある子、家族らがどんな支援を必要としているのかを知りたい。希望を抱ける未来の宮崎にしたい。1面に連載中の年間企画「耳をすまして 子どもと障害みやざき」の思いだ。

 東京パラリンピックや全国障害者芸術・文化祭の本県開催を来年に控え、さまざまな障害について考える機運は高まっているがまだ十分とはいえない。第5部テーマは「県外の取り組みに学ぶ」。記者が各地に飛んで、手本とすべき先進的ケースを報告している。

 「特異児童」の施設の人は名人学校と自称する。生活する上での困難はつきまとうが子どもたちはみな得意芸を持つからだ。ある子はクレヨンで美しい色彩の混とんを生み出す。だが無知、無情の世間は施設のことを心ない言葉で呼ぶ。

 本紙読者ならば無料の「デジタル夕刊プレみや」に「耳をすまして」第1部(全10回)の音訳が入った。2部以降も順次音声化する。視覚に障害のある人のためのものだが、そうではない方も耳をすましてほしい。声なき声が聞こえてくる。

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