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がもじん

2019年5月29日
 人か魔物か。まったく正体不明の「がもじん」という怖いものが本県・児湯の伝承にあるそうだ。子どもが何か悪さをすると「がもじんがくっど」と親におどされるという。

 では、秋田・男鹿のナマハゲや鹿児島・甑島のトシドンのような異形の来訪神の類かといえば、そうではない。ナマハゲのように「親の言うこど聞がね子はいねが」と説諭はせず、トシドンのように長所をほめることもない。まれに姿を現しても言葉は発しない。

 都城市在住の池山弘徳さんが発行兼編集者を務める同人誌「見者 Voyant」の近刊にあった鷺宮佑さんの評論・児湯「がもじん」考で、恐怖の怪人のことを知った。闇にまぎれ姿形を伝える絵や記録など一切存在しない怖いもの。

 きのう川崎市で発生した事件。スクールバスを待っていた私立小児童らが包丁を持った男に襲われ、保護者2人を含む19人が刺されるなどして6年生栗林華子さんと外務省職員小山智史さんが死亡した。小山さんは宮崎市出身。けがのなかった児童の父親だった。

 搬送先の病院や川崎市消防局によると亡くなった栗林さんと小山さんの首には深い傷があり、小山さんには首のほか肩や背中にも傷があったという。体を張った必死の防御で児童たちを守ろうとして男に背後から襲われた可能性がある。

 「がもじん」よりはるかに恐ろしい殺意が社会に潜む。残念ながらそれが現実なのだろうか。小山さんの勇気で何人かの生命が助かったとしたらそれだけが救い。今は亡くなった2人の冥福を祈り、けがを負った人たちの回復を願いたい。

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