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巨大地震予知は不可能

2019年5月27日
 七十二候の蟷螂生(かまきりしょうず)が近い。秋に産み付けられたカマキリの卵から沸くように幼虫が出てくる。気持ち悪いくらいだが、害虫を補食するカマキリは農業にはありがたい存在だ。

 スポンジのようなカマキリの卵が植物の茎などに付いているのはたまに見るが「カマキリが高い所に産卵すると大雪」という言い伝えを研究した人がいる。新潟県出身でこの研究により工学博士になった酒井與喜夫(よきお)さん。長年の観察の結果を著書にまとめている。

 エッセー「カマキリの雪予想」によると「言い伝えにはかなりの信ぴょう性があることを確信した」という。もっとも、気象や生物の専門家には疑問視する声もあるようだ。有名な「ナマズが暴れると地震」という伝承も最近は聞かない。

 現代人なら、もっと科学的な方法で、気まぐれな自然の振る舞いを完璧に予測したい、という悲願がある。その達成へ科学者らの懸命な研究は続いている。しかし、残念ながらというべきか、南海トラフ巨大地震について、全く予知不可能という調査結果が出た。

 時や場所などを正確に言い当てる直前予知を100回試みても99回は失敗する、と日本の地震学者が考えていることが林能成(よしなり)関西大教授(地震学)が行ったアンケートで分かった。人は自然の気まぐれに今後も翻弄(ほんろう)されるしかないのか。

 だが、逆に「無理なものは無理」と覚悟を定めた方が展望が描ける。これまでの研究でも、地震のメカニズムなど解明した謎は膨大だ。決して無駄ではない。これまでの知見を防災、減災に生かしてこそ人類の英知は“野生の勘”に勝てる。

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