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裁判員制度10年

2019年5月22日
 裁判員裁判が始まってすぐの頃、メディアが逐一、裁判員になった人たちの感想を伝えた。宝くじは当たらないのにこんな役目には当たっちゃってという嘆きの声もあった。

 各地裁ごとに年に1回選挙人名簿から無作為抽出された「候補者名簿」が作成される。さらに事件ごとに名簿から通常50~100人程度の裁判員候補者が無作為で選ばれ、裁判所で行われる選任手続きへの呼び出し状が送付される。“当たる”確率は極めて低い。

 まさかの呼び出しに当惑する人の気持ちは分からないでもないが、いささか困った状況だ。導入から丸10年を迎えた裁判員裁判だが県内で裁判員候補者に選ばれながら辞退した人の割合は2012年以降60%を上回り続けているという。

 殺人や死体損壊・遺棄などの罪に問われた男の裁判で裁判員になった女性は終わったとき「やっと解放される」と安堵(あんど)した。死刑も議論され、審理期間が40日間にも及んだ裁判で心理的負担は大きかった。「二度と経験したくない」という感想は極めて当然だろう。

 しかし女性は判決後、被告が控訴するかどうかニュースを追い、他の裁判員裁判にも強い関心を向けるようになった。「社会を見る目が変化した。そういう意味では良い経験になったと思う」と語る。やった人だけが達し得る境地だろう。

 裁判員経験者の言葉は重いがみんな選挙人名簿から無作為に選ばれた人たち。それだけ日本人の知性、理性のレベルが高いということだろう。裁判員が司法判断に与えた影響は小さくない。あなたに通知が来たら臆せずやってみてほしい。

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