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寸劇で町おこし

2019年5月16日
 1870年代の出来事だ。米国ネバダ州のとある田舎駅に到着した列車の乗客が外の空気を吸おうとホームに降り立つと、銃声が聞こえ、人が悲鳴を上げてバタバタ倒れた。

 驚いた乗客はホームに伏せて難を避ける。殺りく劇が終わり乗客がこわごわ顔を上げるとならず者が倒れた男を引きずりながら去っていく。発車のベルが鳴り、ほうほうの体で列車に乗り込んだ乗客は無事を喜び合った(桐生操著「騙(だま)しの天才 世界贋作物語」)。

 迫真の殺りく劇は、米国版の町おこし策で、実は芝居だった。役者はすべて地元の素人。寂れた町を活気づける妙案はないか、住民たちが議論の末、鉄道会社の車掌が考えた案を採用した。「乗客の度肝を抜く西部劇を呼び物にしよう」。

 日南市飫肥の町おこしグループ飫肥楽市楽座・祐兵(すけたけ)クラブが飫肥城大手門前で披露した寸劇が150年前の米国の実話に重なった。ごろつきに連れ去られそうになる町娘を通り掛かった侍が助けるというチャンバラ劇は、台湾のクルーズ客に大受けだったという。

 昨年に続く2回目の試み。大型バスで到着したクルーズ客たちが大手門近くに来たところで劇がスタート、剣道有段者が扮(ふん)する侍と用心棒役が模造刀を使い、迫力満点の大立ち回りを演じた。地元の日南高生らも車夫役などで協力した。

 町ぐるみの劇で、くだんの町は有名になり観光客が押し寄せるようになった。なぜだか陸軍の反対で3年後に中止されたが歌にもなって今に語り継がれる。飫肥の人たちの体当たりの寸劇を応援したい。きっと大きな可能性を秘めている。

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