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ポスト安倍

2019年5月14日
 きょうは首相在任中に体調を崩し入院先の病院で亡くなった小渕恵三さんの命日だ。死因は脳梗塞。19年前のことだ。在職日数616日。実績を残すにはあまりに短かった。

 官房長官時代の新元号「平成」発表が鮮烈過ぎて国民に「平成おじさん」と親しまれた。首相就任時は米有力紙から「冷めたピザ」と評されたが怒らず報道陣を温かいピザでもてなすユーモアのある人だった。支持率も上向き長期政権も視野に入ったところで倒れた。

 安倍晋三首相の自民党総裁任期が切れる2021年9月に向け、「ポスト安倍」をめぐる党内レースが混沌(こんとん)としてきた。そんな中にあって元号「令和」の発表で知名度を上げ、国民に顔を印象づけた菅義偉官房長官が有力候補に浮上した。

 一見、地味ながらも小渕さんは後に最大派閥を率いた。一方、菅氏は無派閥で何度も周囲から派閥づくりを勧められたが、ずっと断り続けてきた経緯がある。そんな政治家としての選択は安倍首相への忠誠を示し、一蓮托生(いちれんたくしょう)の胸中を証明するためだとされてきた。

 小渕さんは市井の人に秘書を通さず電話をかけ「ブッチホン」なる流行語を生んだ。一国の首相が前例のないことをやったのは国民と政治の距離を縮めたいという思いがあったからだろう。だが電話を受けた方はあまりに唐突で戸惑った。

 菅氏の名前が浮上したことで停滞気味だった自民党の総裁選びが唐突に動き始めた感がある。冷めたピザも温め直せばおいしいが焼きたてピザもそろえて味見させてほしい。「ポスト安倍」次第で政治が国民にとって遠くにも近くにもなる。

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