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道徳を基盤とする経済

2019年4月11日
 578年創業。大阪市の建築会社「金剛組」は世界最古の企業といわれている。神社仏閣の設計・施工を業務とするが、1400年以上存続できた理由はどこにあるのだろう。

 「ハーバード日本史教室」(佐藤智恵著)の中で米国・ハーバード大学のジェフリー・ジョーンズ教授が分析している。「後継者を実力主義で選ぶ」家訓があり、有能な人材が家業を継承できたこと、本業以外の業務にほとんど進出しなかったことなどを挙げる。

 日本には100年以上続く企業が3万社以上あって、代表的な上場企業の平均寿命は15年という米国と対称的。回転の速さは米国経済の強みでもあるが、解雇や転職を繰り返す社会が本当に人を幸せにするのか、という疑問も出ている。

 本県出身の小村寿太郎も卒業生である名門ハーバード大学で、世界でも珍しい現象である日本企業の長寿に関心が高まっている。学生の間で特に人気のある経営者が三菱の創業者・岩崎弥太郎とそのライバルであり、1万円札の肖像画に決まった渋沢栄一という。

 ジョーンズ教授によると、世界の移民や格差問題を考える時、注目されるのが道徳を基盤とする渋沢の経営理論だ。「彼は勝者と敗者の格差を助長する経済システムは人々から支持されない、と考えていた」と先見の明を高く評価する。

 渋沢の紙幣起用には議論があるが、自由主義経済の先導役を世界にアピールする効果はあるかもしれない。それにしても1万円の福沢諭吉(大分県)は去るが、千円で北里柴三郎(熊本県)が登場。小村寿太郎もいずれ、と期待するのだが。

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