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「咎なく死す」

2019年2月8日
 たてに7段書きした「いろは」それぞれの行の最後の文字をよこ方向へ読むと、とかなくてしす。これを咎(とが)なくて死すと読み、意図して作られた暗号だったとする説がある。

 「いろは歌」は「いろは」に対応する歌だが、あまりに巧みで内容も深いため暗号まで仕組まれていようとは、誰も考えなかった。作者を空海とする説があるほど古いが千年にわたり咎なくて死すと解読されることはなかった(村上通典著「いろは歌」の暗号)。

 千葉県野田市の小学生栗原心愛(みあ)さんが自宅浴室で死亡した事件。傷害容疑で逮捕された父親が、2018年2月、心愛さんに書かせた「お父さんにたたかれたというのはうそです」との書面を児童相談所に提示していたことが分かった。

 児相によると、父親が内容を指示して心愛さんに書かせたものだった。しかし児相は心愛さんに自らの意思で書いたのかどうか、確認しないままその2日後、親族宅から自宅へ戻すことを決めた。父親の指示だったことを確認した後も、特に対応していなかった。

 学校アンケートで父親の暴力を訴えた彼女が一転、その内容をうそだったとし「お父さんに早く会いたい」「児童相談所の人にはもう会いたくないので来ないでください。会うと嫌な気分になるので、今日でやめて」と訴える内容である。

 身に迫る危険を暗号に仕組む余裕は10歳の心愛さんにはなかっただろう。言われるままに書き、何の咎もないのに死んだ。行間に「これは、うそです。助けて」とあるのを読み取ってあげたかった。背後に恐ろしい眼光を感じる書面である。

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