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三浦雄一郎さんがアコンカグアから持ち帰るもの

2019年1月13日
 五大陸の最高峰すべてに登頂する記録を残し、マッキンリー(デナリ)で消息を絶った冒険家の植村直己さんだが南米アコンカグアに挑んだ時の苦労話が他を圧して面白い。

 テントを放牧の牛の群れに襲われ、食料を食い尽くされたため軍隊監視所に窮状を訴えると干し肉、缶詰を譲ってもらえたこと。鍋も持たず穴の開いた靴下など貧弱な装備を当局にとがめられて空き缶が鍋になり、靴下は手袋も兼ねると必死に説得したこと等々。

 登頂は成功したが、その証明で下山後にひともんちゃくあった。土地のしきたりでは登頂の成功者は前の成功者が残した国旗などの記念品を持ち帰ることになっていたが、植村さんは知らなかった(植村直己著「青春を山に賭けて」)。

 目下そのアコンカグアを冒険家で、現役のプロスキーヤーの三浦雄一郎さんが目指している。86歳の体力を温存するため一部でヘリコプターを使って日程を短縮する計画変更が発表され、これに伴って登頂予定は、当初の現地時間21日から同20日へ前倒しとなる。

 標高4200メートルのベースキャンプ(BC)で高度に体を慣らしてから歩いて登る計画だったが、BCから標高5370メートルの峠の近くまでヘリで行くことに。そこから歩いて山頂を目指す。だからといって偉業の価値が下がることはない。

 植村さんがアコンカグアから持ち帰ったのは頂上の小石2個だったが、たまたまドイツ隊など別の隊がいて本物と証明できた。三浦さんが持ち帰るのは小石でも前の登山者が残した国旗でもない。高齢社会の日本を勇気づける希望である。

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