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ピッピが問うもの

2019年1月8日
 その子は9歳。髪を2本の三つ編みにして横にピンと立て、細長い足には長くつ下。肩には猿を乗せ、馬を持ち上げる力持ち。この女の子に心当たりのある人は多いだろう。

 そう、「長くつ下のピッピ」だ。スウェーデンの児童文学作家、アストリッド・リンドグレーン(1907~2002年)が第2次世界大戦終結の年に出版し、いまも世界で読み継がれている。魅力は個性的な外見だけではなく、ピッピが持つ自由と正義にある。

 町外れの屋敷で一人気ままに暮らすピッピは、大人たちからすれば風変わりな子。そんな目も気にせず友と遊ぶ時間を大事にし、いじめっ子は木の上に放り投げ成敗。泥棒には一晩中踊らせて観念させる。火事から幼子を助けたことも。

 1964年に邦訳され、日本でも人気となった。どれだけの子どもが自分とピッピを重ね、想像の世界で屋根まで一気に駆け上がり、サーカスで大活躍しただろう。縮こまらず伸びやかでいる楽しさを子どもたちに伝えた名作は、世界70以上の言語に翻訳された。

 宮崎市のみやざきアートセンターで開催中の「長くつ下のピッピの世界展」で、ピッピはなぜあんなに自由か知った。子どもは一個人として敬意を払われるべきだという作家の信念があったからだ。体罰や虐待の根絶も世に訴えていた。

 子どもの想像力を育む上で読書や遊びが大切だとも語っていたリンドグレーン。人生を豊かにするとともに、より良い社会を築くため想像力は欠かせないが、現代社会は想像の翼を広げる時間と環境を与えているか。ピッピが掲げる問いだ。

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