ホーム くろしお

遠くない先祖の苦難

2018年12月2日
 どう描かれるか。考えると気持ちが高ぶってくる。今夜放映するNHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」で、鹿児島に下野していた西郷隆盛がついに兵を起こし、西南戦争が始まる。

 先日、宮日会館のギャラリーで開催された作品展で陶芸家の松形恭知さん(67)=国富町=と話していてドラマに話が及ぶと、穏やかだった表情が曇った。「英雄らしさが強調されるのは仕方ないが、若い人たちには西南戦争の負の面も知っていてほしい」と言う。

 無理もない。戦争が始まった1877年、政府側に立った松形さんの高祖父(曽祖父の親)祐高は西郷軍に惨殺された悲劇があるのだから。その経緯は松形さんの父・元県知事松形祐堯さん(故人)の自伝「たゆたえども沈まず」に詳しい。

 飯野村(えびの市)の士族のうち270人が西郷軍に参戦した。しかし実質村長の役職で政府の役人だった祐高は「私党の挙兵は大義名分に反する」として西郷軍からの度重なる協力要請を拒否。捕縛された時は逃げようと思えばできたが従容として死に就いた。

 「刀で首をはねたのは16歳の少年でした」。昨日の出来事のように語る恭知さんは、先祖の無念をかみしめるようだった。本県における戦禍は甚大で、同様の悲劇が多くあっただろう。延岡方面の戦いで西郷軍の組織的な戦闘は終わる。

 国内最後の内戦は本県で終わったことになる。建国の神話に関わる本県が、近代日本を統一する事件の舞台にもなった歴史の符合。遠い中央ではなく、私たちの足元で展開された歴史だ。近い先祖の苦難をかみしめながらドラマを見たい。

このほかの記事

過去の記事(月別)