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米国にいちばん近い島

2018年11月5日
 森村桂さんのベストセラー旅行記にいざなわれて若かりし頃にその島を訪ねた。一年じゅう花が咲き、マンゴーやパパイアがたわわに実るという「天国にいちばん近い島」。

 燃えるようなフランボワイヤン(火炎樹)の花で真っ赤に染まった島の一番大きな町にある中央公園でプラカードを掲げて歩く、ごく小規模のデモ行進に遭遇した。地元の人に「独立を訴えるデモで年中行事のようなもの。実現するとは思えません」と教わった。

 40年近い昔のことだがニューカレドニアのフランスからの独立運動は息長く続いていたようだ。きのう独立の是非を問う住民投票が行われた。目撃したデモに殺気だった雰囲気はなかったが1970年代には死傷者を伴う衝突もあった。

 沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の賛否を問う沖縄県民投票条例が先月末に公布された。6カ月以内の実施が定められ来年4月30日までに県民投票を行う。具体的な日程は玉城デニー知事が決定する。同県は投票に向けて県民投票推進課を新設した。

 しかし投票が実施される頃には、辺野古の海は元の姿を失っているかもしれない。政府は反対派の人たちが抗議する中、辺野古沿岸部で埋め立てに向けた関連工事を再開した。年内に土砂を投入し埋め立てを本格化させる方針だという。

 自国の政府によって「米国にいちばん近い島」を無理強いされる沖縄だ。知事選で選挙前の予想以上の大きな票差で示した民意を踏みにじられて地元の怒りは増幅している。基地のない島を目指す運動は混迷の度を増しながら今後も続く。

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