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三平の祖父の杉山

2018年11月1日
 水木しげる作「河童の三平」の主人公の三平は祖父と二人で暮らしていた。ある日、死に神から寿命の尽きる日が近いことを知らされたおじいさんは三平を山へ連れて行く。

 山は、見事なスギの美林だ。しっかり手入れされて太い幹がまっすぐ空に向かって伸びている。おじいさんは三平に「わしが若い時に植えたものだ。困ったときは一本ずつ売って、そのお金でごはんを食べなさい」と言い残し、憂いのない表情であの世へ旅立つ。

 祖父母の代が苗木を植え、子の代さらに孫の代が下刈り、除伐などの作業を引き継ぎ、寒さに耐え汗を流した数十年にわたる歳月が積み重なって、やっとお金になる林業というなりわいだ。そうやって育てた美林が災害で痛手を受けた。

 台風24号によるスギ倒木が多発し、被害本数が膨大な数に上っている。被害の大きかった都城市の都城森林組合がGPSでスギなどの人工林を調査したところ、KIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎35個分に相当する面積で倒木や山腹崩落が確認された。

 同組合の竹下忠利総務部長によると80年持ちこたえた山も被害を受けた。材が裂けた倒木は価値が下がり、造林には山主の自己負担が発生する。伐採作業員を倒木処理にシフトさせているため丸太生産も落ち込むなど影響は多岐に及ぶ。

 三平のおじいさんが知れば孫の暮らしを案じて、顔をこわばらすだろう。80年間持ちこたえた山が壊れるとは三代にわたる労苦が水泡に帰すということだ。町で暮らす人間は被害を実感しにくいがせめて知っておきたい。事態の深刻さを。

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