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思い出に残る記事

2018年10月30日
 35年前に赴任していた日向市で、市などが主催する点訳ボランティアを養成する講習会の初回を取材してがく然としたことを覚えている。受講生がわずか6人だったからだ。

 さほど広くもない中央公民館の一室が閑散としていた。講座は週1回、夜2時間のカリキュラム(1年間)で本格的な点訳奉仕者を養成するコース。事業初年度だった前年は開講時40人近くいた受講生は約半年で半減、最終的に修了証を手にしたのは4人だった。

 奉仕の精神に燃えていた人たちも点訳につきまとう肩凝り、目の疲れや単調で地味なことなどでつまずき、大半がやめてしまったという。随分、昔の話だが障害者の役に立てるほどの高い技能を身につけるのはことほどさように難しい。

 県が、手話などの普及を促す「手話言語等条例(仮称)」の素案を明らかにした。手話や要約筆記、点字等の普及を促すため県には率先して施策を進める責務があるとし、障害者が手話を学ぶ機会を確保することや手話通訳や要約筆記など支援者の育成に取り組む。

 県内一体となって共生社会を実現しようと県民や事業者にも施策への協力を求めていく方針。いい内容だと思う。手話通訳や要約筆記を身につけようという奇特な人たちの気持ちを酌み、挫折しないようにサポートする環境も整えたい。

 「受講者6人 奉仕者離れ深刻」の見出しで点訳ボランティア養成コースに人が集まってくれないことを記事にしたら、事情を知った人たちが何人か講座への入会に申し込んでくれた。たくさん書いた記事の中でも思い出に残る一本である。

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