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図書館の友

2018年10月29日
 明治初期、若い幸田露伴は図書館に通って勉強した。そこでよく会い、知り合ったのが同じ年頃の淡島寒月という青年。家が金持ちで、度が過ぎるくらい異国に憧れていた。

 外国人になろうと髪を赤く染めたほど。しかしただの変人ではなかったのは、外国で日本の文化を聞かれて答えられないのは恥、と考えて独学で日本の古典を学んだことだ。当時は忘れられていた井原西鶴の面白さに夢中になった。淡島は露伴にも西鶴を薦める。

 嫌がっていた露伴も読むうちに夢中になり、友人の作家尾崎紅葉にも薦める。露伴と紅葉は西鶴のような文体で小説を書きだす。明治の文学は図書館で知り合った若者たちから始まったといえるかもしれない。彼らは終生の友となった。

 作家の出久根達郎さんが「図書館の友」という文の中で、中学生に「良い友人と巡り会う場所ってありますか」と聞かれて図書館を勧める際の逸話だ。「だけど、図書館は私語厳禁だよ」と中学生に再度問われて「図書館や本そのものが友人でもいい」と答える。

 県立図書館が移転、新築から30周年を迎えた。この間に図書館の役割もずいぶん変わってきた。単に本を貸し出したり勉強したりする箱ものではなく、情報を発信する基地として、また交流の場としてのソフトな機能が求められている。

 県立図書館では展示会やコンサート、講演会などが開かれている。文化活動の交流が生み出す暮らしの潤い。まさに図書館本来の役割だろう。読書週間が始まった(11月9日まで)。出久根さんが勧めるように友達になる本とも出会える。

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