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撃たれたキジ

2018年10月23日
 稲刈りが大半済んだ宮崎市・生目古墳群周辺の田畑を歩いていたら、目の前を何かがすばやく横切った。草むらに赤いとさかが見えて分かった。この秋はよくキジと出合う。

 大抵は速足で逃げるが、距離が近いと「ケーン」と鳴いて飛び去ることもある。「あしびきの山鳥(やまどり)の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む」(柿本人麿)。秋の長い夜をうたった歌。山鳥はキジの一種だ。それでキジは秋の鳥と思っていたが一般には春の鳥らしい。

 「キジ(記事)も鳴かずば撃たれまいに」とサウジアラビア当局が思ったのか。同国政府に批判的な記事を書いていたサウジ人記者のジャマル・カショギ氏がトルコで死亡した事件は、ムハンマド皇太子が関与した疑いが深まっている。

 「殴り合いで死亡」と当局は説明していたが、つじつまの合わない状況が明らかになり説明は二転三転。真相は草むらの中だが、当初は巨額の武器を購入してもらう立場上サウジ政府を擁護していたトランプ米大統領も「ごまかしやうそがあった」と不満を示す。

 サウジ当局の整合性のない説明を欧州の指導者らが厳しく批判する一方で、日本政府は米国など国際社会の対応を見守る。原油輸入量の4割をサウジに頼る日本にとって関係悪化を避けたい思惑は分かるが、腰が引けた印象は否めない。

 人の頼み事や相談を無愛想に断るさまを「けんもほろろ」というが、「けん」はキジの鳴き声からきている。重大な人権侵害には毅然(きぜん)とした態度を見せないと、キジを国鳥に仰ぐ日本が国際社会で「けんもほろろ」な扱いを受けかねない。

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