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だいこんの花

2018年10月12日
 「人知れず忘れられた茎に咲き 人知れずこぼれ散り 細かな白いだいこんの花」。ドラマの始まりに、竹脇無我さんが森繁久弥さんの詩を朗読するホームドラマがあった。

 朗読後に流れる曲も味わい深かった。1970年代に放映された「だいこんの花」だ。旧海軍の元艦長役森繁さんが亡き妻のことを息子役の竹脇さんに回想しつつ繰り返すセリフ「素朴でひそやかなダイコンの花のような人」がタイトルの由来だったと記憶する。

 9月末から本県に相次いで接近した台風24、25号による農水産業被害額について県は10日、過去5年間の台風被害で最大となる43億5014万円(速報値)に上ると発表した。農産物の被害額は全体の4分の3を占め、約33億円に達した。

 このうちキャベツやキュウリ、ピーマンなど野菜が13億7601万円、飼料作物は3億5028万円。ビニールハウスの全半壊や破損など農業用施設の被害額12億3291万円となった。県農政企画課によると被害額や被害面積はさらに拡大する見通しだという。

 ダイコン産地の田野は生鮮用も加工用も壊滅状態になった。年内にたくあんにして出荷するため先月中旬までに種をまいた畑は資材を含めて一切合切が駄目になった。遅れを取り戻すため今週初めから種のまき直し作業が行われている。

 商店、農産物直売所の棚から野菜が消えて天災の激しさを知るわたしたちだ。もとより花が咲く前に収穫されるダイコンだが、それを食べる消費者の知らないところで、再起のためのひそやかな努力が続いていることを忘れてはならない。

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