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山で子が泣くスギ盗伐

2018年10月11日
 先日、全国的な合唱大会で知られるNコン(NHK全国学校音楽コンクール)の中学校の部をテレビで何げなく見ていた。全国のブロックから選ばれた11校が出場していた。

 課題曲と自由曲の2曲ずつ発表する。どこかの学校の自由曲が「日向木挽唄」だったので、調子に乗って「やーれー」と歌った。民謡そのものではなく編曲なので、ちょっと合わせにくい。ところが別の学校の順となって自由曲がまたも日向木挽唄。正直驚いた。

 たぶん合唱の関係者からすれば珍しくないのだろう。民謡の宝庫とされる本県でも「ひえつき節」「刈干切唄」と並ぶ代表曲だが、合唱曲として全国の学校で親しまれているとは誇らしい。本県の山々へ思いをはせてくれているだろうか。

 日向市で全国大会があるが、源流は日南地方の木挽唄。「宮崎県大百科事典」によると「切り倒した木を玉切りや板に挽(ひ)くとき鋸(のこ)に合わせてうたう労作歌」とか。山暮らしの寂しさをうたう歌詞はいくつかあって、林業者が各地を渡り歩くうちに洗練されていった。

 歌の哀調に怒気が交じりそうな昨今の県内山林事情だ。スギの盗伐や誤伐が問題となっている。県警によると、かなりの数の相談が寄せられているが立件はわずかにとどまるという。被害日時や場所の特定が難しい上、時効の壁が厚い。

 山林所有者の高齢化や転出で、世界的な木材の需要増という好機に対応できていない背景がある。伐採期を迎えた木材は、先人が残してくれた宝物。「山で子が泣く」ことがないように、行政も実態解明や監督強化に乗り出すべきだろう。

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