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悪役タッグ

2018年9月29日
 日米が強力なコンビを結成、と勘違いしそうになった。両国の貿易問題に関する協議で飛び出した新語「TAG」。プロレスの「タッグ(TAG)を組む」と同じつづりだ。

 たぶんローマ字でそのまま読むのだろう。両国が締結を目指す「物品貿易協定」の頭文字でつくる、できたばかりの造語だ。ローマ字略の造語は戦前旧日本海軍でも盛んにつくられていたが、仲間内で通じる隠語。TAGにも世論を目くらましする怪しさがある。

 農畜産分野の市場開放に直結するFTA(包括的な自由貿易協定)そのもの、という見方がある。安倍首相は「全く異なる」と強調するが、物品の関税を協議する以上、農家の不安は尽きない。米側は、FTA締結への一歩と位置づける。

 米国からの厳しい圧力に日本政府はよく耐えていると思うが、自動車の高関税を免れるためのがんばりで、引き換えに農業を明け渡すのならば黙っていられない。ただトランプ大統領の言動の多くは、中間選挙に向けてファンをあおる“興行”のようにも見える。

 国際社会では何かと“ヒール”(悪役)扱いのトランプ大統領。6月に通商問題で安倍首相と会談した際には「真珠湾攻撃を忘れないぞ」と前置きした。このころから安倍首相を悪役にしてタッグを組もうと画策していたのかもしれない。

 「日本は自由貿易の旗手だ」と国連総会で“善玉”宣言をした安倍首相だが、ヒールに転身と世界が見るかもしれない正念場だ。プロレスでは、悪役コンビは仲間割れするのがお約束。くれぐれも不名誉な反則負けには付き合わないように。

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