ホーム くろしお

核廃絶の結び目

2018年9月26日
 ひもの結び目をほどこうとして、誤って固く結びついてしまうことがある。無理してひっぱると逆にしまるばかり。結び目は、西洋ではなかなか解決できない問題の象徴だ。

 結び目は根気よく丁寧にほどこう。「結び目を解くマリア」という有名な絵がドイツ・アウクスブルクの教会にある。ローマ法王フランシスコはドイツの神学校に留学中、この絵に感動。出身地のアルゼンチンに帰って、その絵はがきをたくさん知人らに配った。

 アメリカ大陸、またイエズス会出身で初の法王。その程度の知識しかなかったが、若き日を描いた映画「ローマ法王になる日まで」を見て、軍事独裁政権下のアルゼンチンで教会の要職を務めて現実の政治と格闘し、苦悩した姿を知った。

 反政府の市民や神父が軍に処刑される。時には無力感にさいなまれたり、妥協したりしつつも、圧倒的な暴力の下で信仰の価値を問い直すフランシスコ。理想を押し通すだけでなく、難問に現実的な着地点を見いだそうとする粘り強さが現法王にはあるのだろう。

 バチカンで宮崎市の「天正遣欧使節顕彰会」の関係者と面会した法王が来年訪日の意向を示した。広島県知事や広島市長、長崎市長らも被爆地訪問を要請してきた経緯もある。実現すれば伊東マンショら使節の顕彰に弾みがつくはずだ。

 「原爆投下は人間性の巨大な破壊の象徴である」と核廃絶に関心の高い法王。唯一の被爆国でありながら、核兵器禁止条約に参加しない日本の矛盾が固い結び目に見えているはずだ。現実を動かすようなメッセージを来日時に期待したい。

このほかの記事

過去の記事(月別)