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ため池の危険性周知を

2018年8月7日
 弘法大師こと空海は平安時代初期に真言宗を開いた高僧だが、留学先の唐から導入した土木技術でも顕著な業績があった。古里の讃岐国(香川県)で行ったため池の整備だ。

 灌漑(かんがい)用水用ため池として日本最大の満濃池(まんのういけ)。奈良時代以前にできたため池だが、決壊を繰り返すので空海の出番となった。高僧と土木とは不思議な関係だが、生産基盤の確立による人心の把握は、万能の天才として空海の名声を確立し、布教にも大いに役立った。

 ハザードマップ(危険予測地図)の作成が必要な「防災重点ため池」は県内では134カ所あり、125カ所でマップを作成。ただ決壊の危険性や浸水予測について住民に直接説明していない自治体もあることが本紙の調べで分かった。

 西日本豪雨では広島県福山市のため池が決壊、3歳女児が流されて亡くなった。防災重点の指定を受けていなかったが、危険性が周知されていたら避難する余地もあったのではないか。農林水産省のデータでは全国でマップが公表されているのは35%にすぎない。

 「危険だと話が広がれば地価下落を招く」なども理由という。似た話を思い出した。20年以上前、首都圏のある市で、全域にきめ細かく地震計を設置する計画が持ち上がった。だが宅地の値下がりを懸念し反対の声が結構あったという。

 本末転倒だろう。ハザードマップは早期避難の有効な手掛かりになる。公表されれば、むしろ地域の安全性を高めることにつながる。ため池の多くは老朽化が進み、過疎地では見回りも行き届かない。各自治体が空海の役割を果たす時だ。

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