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核と五輪

2018年8月6日
 「この核の時代、人間にとって大きな希望はオリンピック運動があるということ」。オリンピアンでただ一人ノーベル平和賞を受賞したフィリップ・ノエル=ベーカーの言葉だ。

 1920年の第7回アントワープ五輪の陸上1500メートルで銀メダルを獲得した英国人。競技引退後も五輪にかかわり軍縮問題に取り組んだ彼は原水爆禁止世界大会のため何回も来日、広島で件(くだん)の言葉を残した(後藤忠弘編著「あの一言はすごかった!スポーツ編」)。

 核廃絶の願いとともに、その名前を覚えておきたいオリンピアンは日本にもいる。1936年のベルリン五輪砲丸投げ選手だった高田静雄氏。現役引退後広島市で働き、1945年8月6日、爆心地から約700メートルの勤務先で被爆した。

 戦後、原爆症と闘いながら写真を撮り続け、ローマ五輪の際は現地で開催された写真コンテストで入賞。この夏は都内で遺作展があった。孫のプロ写真家、敏明氏によると「戦後の苦しい時期も、悲しい写真は嫌だと子どもや笑顔の人ばかり撮っていた」という。

 前回の東京五輪開会式で最終聖火ランナーだった坂井義則氏は8月6日の原爆投下からわずか数時間後、広島県内で誕生した。聖火台への点火の一瞬を、外国特派員は「アトミック・ボーイ(原爆の子)が今平和の火をともした」と伝えた。

 2年後に迫った東京五輪・パラリンピック開閉会式の総合統括を狂言師の野村萬斎氏が務める。よいものを期待しつつ、まず核廃絶と平和を希求する心を世界に伝えてほしいと思う。今後もオリンピックが大きな希望であり続けるために。

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