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ガリバーと役人

2018年8月3日
 18世紀前半に英国で出版され、世界中で今も人気のガリバー旅行記。子ども向けに小人国の部分だけが有名になったが、政治を風刺する空想物語として旅の範囲は大変広い。

 巨人の王国や馬の国に行ったり、漂流中に空飛ぶ島に助けられたり、世界中を駆け回る。意外に知られていないのが日本への上陸。物語中で唯一実在する訪問国だ。日本は鎖国中だから、作者のスウィフトは宣教師や商人らの記録から想像を膨らませたのだろう。

 江戸で将軍に謁見(えっけん)し長崎からオランダ船で帰国するが、総じて日本の印象はよい。研究者によると相対的にオランダの印象を悪くするためらしいが、日本の役人の規律がよく守られている描写はいくつかの資料を参考にしたと思われる。

 裏付けるように、幕末に来日したシュリーマン(トロイ遺跡の発掘者)は旅行記の中で、日本の役人の規律正しさや清廉さを絶賛する。「彼らに対する最大の侮辱は、たとえ感謝の気持ちからでも現金を贈ることだ。彼らのほうも(受け取るより)切腹を選ぶ」。

 封建制における役人とでは立場が異なるが、今の文部科学省をガリバーやシュリーマンが見たら、全然違う印象を歴史にとどめることだろう。今度は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の業務を巡る収賄容疑で前国際統括官が逮捕された。

 大ニュースにはならなかったが、課長補佐級職員の横領事件も発覚しており腐敗体質が目に余る。組織が巨大化して、いわゆる“ガリバー”化したのが原因か。一度国民が縛り上げて、解体的な出直しを図らないと教育行政も任せられない。

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