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奇跡の生還

2018年7月11日
 ミシシッピー川近くの洞窟は曲がりくねった枝道がつながっては分かれ、どこへ通じているのか分からない巨大な迷宮。そんな恐ろしい場所でトムとベッキーは迷子になる。

 ろうそくは燃え尽きて暗黒の世界に。食べ物はポケットのお菓子だけ。ただでさえ絶望的な状況なのに同じ洞窟内には逃亡中の殺人犯まで潜伏している。ふたりの運命はまさに風前のともしびだ。マーク・トウェイン著「トム・ソーヤーの冒険」の緊迫の最終章。

 タイ北部の洞窟で続いた少年ら13人の救出作業を世界が固唾(かたず)をのんで見守った。発見地点は洞窟の出入り口から海軍特殊部隊の潜水士でも数時間要すほど奥の場所で、潜水が必要な難所があったため脱出が可能なのか不安視されていた。

 タイ当局者によると救出作業には海軍と外国からの潜水士ら約90人が参加。安全を最優先させ避難している少年1人につき2名の潜水士が付き添い、前の潜水士が少年のボンベを抱え、別な潜水士が後ろから見守った。あらかじめ張ってあるガイドロープが命綱。

 トムは洞窟内の泉でベッキーを休ませたこ糸を命綱にして脱出口を求める。そして、ついにミシシッピーの流れを一望する小さな穴を見つける。最後は大人に助けられるが決め手になったのは生きることをあきらめなかった心の強さだ。

 一時は絶望視されたタイの洞窟の少年たちもきのうまでに全員が救助された。西日本豪雨で倒壊した家屋にも生存者がいて、今なお強い心で生き抜き、救助を待っていると信じたい。「奇跡の生還」があれば世界を勇気づける一報になる。

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