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洪水と良寛

2018年7月10日
 北海道の石狩川が河川改修を繰り返した結果、全長日本一から3位に転落。そんな逸話を先週襲来した台風の折に書いたが、1位の信濃川も洪水と無縁だったわけではない。

 それどころか大雨の度氾濫する暴れ川だった。江戸時代には六十数回、洪水や堤防が切れた。広い越後平野を托鉢(たくはつ)して歩き、豪雨にあえぐ庶民の生活を間近に見ていた良寛和尚は、その窮状を漢詩の中で詠んでいる。水上勉著「良寛」にある訳を要約して紹介する。

 「豪雨は田と畑を水没させた。村里に子供らの歌は聞かれず、道には車馬も途絶えた。川の流れの恐ろしさよ。祈ったのに神様のはからいはおかしい。今年は作物の出来がよくて、仕事に精が出たのに、一朝にして根こそぎ台無しだ」。

 広範囲に水没した住宅地や田畑の映像を見ると、神様さえなじる和尚の嘆きが分かる。西日本の各地に土砂崩れや河川の氾濫などの被害を及ぼした記録的な豪雨。この高度に文明化したと思える現代にあっても、天災は多大な人的被害をわずかな間にもたらした。

 本県各地に甚大な水害をもたらした2005年9月の台風14号を思い出す。水没した知り合いの家に片付けの手伝いに行ったが、家具一つでもきれいに泥を落とすのに大変手間取った。再び住めるようになるには、相当の時間がかかる。

 今回の被災地にはまだ多くの行方不明者がいる。一刻も早い発見に全力を尽くしてほしい。幸い救助された人々も長期の避難生活になるかもしれない。国は最大限の支援をしてほしい。日本列島ではだれもが天災に遭う可能性があるから。

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