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ノンちゃん医者になる

2018年7月6日
 ノンちゃんの夢はお医者さんだ。赤痢や腎臓炎、声帯の病気で死線をさまよったときに助けてもらって幼いながら命の恩人、努力してなるに値するお仕事と考えたのだろう。

 石井桃子著「ノンちゃん雲に乗る」の主人公はとても勉強ができる女の子。池に落っこちたことがきっかけで雲の世界へ行き、そこで白いひげを胸まで垂らしたおじいさんに会う。家へ帰るための課題になったのが「ひとつ、うまいうそをつく」という試験だった。

 東京地検特捜部は受託収賄の疑いで文部科学省の科学技術・学術政策局長を逮捕した。わいろに相当するのが何か知って驚いた。時代劇なら菓子箱に潜ませた小判が悪徳商人からお代官さまに差し出される。今の世でもふつう金か物だ。

 容疑者の局長は、前職の官房長時代に、東京医科大の関係者から「私立大学研究ブランディング事業」の対象校に選んでほしいと依頼を受け、その見返りの謝礼として今年2月に実施された当の大学の入試で子どもの点数を加算させ、合格にしてもらったという。

 うそがつけず「うそきらいなんだァ」と身をもんで暴れるノンちゃんにおじいさんがくれた点数は百点。無事に家に帰り、やがて女学校に進んだノンちゃんが目指したのは、お父さんに教えられた無医村のお医者さんになることだった。

 うそどころか究極のインチキを使い、子にどんな医者になってほしいと、この父親は思ったか。「ノンちゃん雲に乗る」は第1回芸術選奨文部大臣賞の受賞作。賞を担当したお役所の要職を歴任した人だがお読みになったことはないはずだ。

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