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はやぶさ2折り返し点

2018年7月1日
 今日から7月。1年の後半に入る。日数を数えると7月2日が実際の折り返しとなるらしいが、年頭に立てた誓いを思い出して自ら再度奮起を促す機会にするとよさそうだ。

 長距離走の折り返し点を回るとほっとする。ここからが本番と分かっていても、後は帰るだけ、と思うと希望が湧く。それにしても、同じ道でも復路で目に映る景色は往路とかなり違って見えるものだ。山道は特にそう。「こんな道通ってきたか」と不安になる。

 子ども時代にだれもが体験したそんな不安を芥川龍之介の小説「トロッコ」は思い出させる。遠い場所までトロッコに乗せてもらった体験だ。作業員に「1人で帰れ」と言われ、夜道を必死に駆け続け、家に着いたときは涙があふれる。

 4年をかけて、ようやく折り返し点の小惑星「りゅうぐう」のそばに到着したのが日本発の宇宙探査機「はやぶさ2」だ。地球から約3億キロ離れているが、太陽の周りを回りながら近づいたので総飛行距離は32億キロに及ぶ。着陸して、秋ごろに岩石の採取に挑む。

 はやぶさ2のカメラが捉えた「りゅうぐう」は、ごつごつした岩石だが、文字通り宇宙の海に漂う宝の山。地下には太陽系ができたころの物質がそのまま眠っている可能性があり、生命の起源の手掛かりを得られるかもしれないからだ。

 玉手箱を開けた浦島太郎は瞬く間に老け込むが、はやぶさ2が持ち帰る玉手箱は一気に人類を若返った気分にさせてくれるかもしれない。帰途に就くのは1年半後。途方もなく寂しい一人旅を無事終えて、歓喜の涙があふれる帰還を祈る。

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