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古武士の対談

2018年6月26日
 どこか、ふたりの風貌が似ていると少し前ごろから気になっていた。競技は違うがどちらも格闘技の人。一方は現役を退いて久しく一方は極みを目指す闘いのさなかにいる。

 このごろ侍の呼称は武道系の人のみならず野球やサッカーの日本代表、ユニホームの色を表す言葉としても用いられているのであえて、ふたりを古武士のような風貌を持つ人物としたい。古武士とは、昔の武士道をわきまえ剛直で信義を重んじる侍のことである。

 まず本県野尻町(現小林市)出身で1988年のソウル五輪に柔道86キロ級の選手として出場した大迫明伸さん。同五輪で当時の世界王者カヌ(仏)を破り、銅メダルを獲得した直後の記者会見を現地で取材したときのことが記憶に残る。

 その前の試合の準決勝で、優勝者のザイゼンバッハ(オーストリア)に帯取り返しで有効を取られた。日本国内なら、かけた方が反則をとられる技だったが、会見場に柔道着姿で現れた大迫さんは相手や審判を責めるようなことはせず、淡々と質問に答え続けた。

 古武士の、もうひとりは大相撲の琴恵光関(延岡市出身)。角界では小兵(こひょう)とされる体格ながら相手の懐に入っての寄り切り、押し出しを得意とする取り口も家族間でさえ余計なことは言わないとされる実直な性格も、風貌にふさわしい。

 琴恵光関の新入幕を県民として心からうれしく思いつつ筆者が夢想するのは大迫さんとの古武士対談だ。柔道と相撲、いずれも辛抱と我慢の極限を要するスポーツに取り組む県内の子どもの背を押す、重く力強い言葉が聞けるだろうから。

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