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もしアインシュタイン博士がハンドルを握ったら

2018年6月24日
 相対性理論のアルベルト・アインシュタイン博士は物忘れがひどかった。汽車に乗ったときのことだ。車掌が検札にやって来たが博士のポケット、かばんに切符はなかった。

 親切な車掌は「アインシュタイン博士、心配しないでください。あなたが誰か、みな知っています。切符をお買いになったのは間違いありません」と言って、立ち去ろうとしたが博士は座席の下をのぞき込むなどして切符を探すのをやめなかった。その理由は後で。

 75歳以上の高齢ドライバーに免許更新時の認知機能検査を強化した改正道交法で、昨年3月の施行から今年3月末までの約1年間で本県では657人が認知症の恐れがある、との判定を一度は受けていたことが県警のまとめで分かった。

 2015年に高齢者が宮崎市の歩道を暴走して6人が死傷した痛ましい事故を教訓に免許の自主返納は増える傾向にある。75歳以上で16年が2104人、昨年は3124人、今年は3月末までにすでに1088人が自主返納し、昨年を上回るペースとなっている。

 車掌にもう一度「あなたが誰かは知っています」と言われた博士はこう答えた。「それは僕も知っているよ。知らないのはどこへ行くかなんで、切符を探しているのです」(烏賀陽正弘(うがやまさひろ)著「シルバー・ジョーク笑う〈顔〉には福来る」)。

 「自宅を忘れたのでタクシーの運転手に聞いた」という逸話も残る博士は車の運転をしなかったそうだが、その方が無難だった。衰えを自覚したり指摘されたりしたら早めにハンドル人生に決別を。わが身のため、人の命を奪わぬためだ。

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