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一期一会の覚悟で

2018年6月10日
 長い曇天の後の爽快さ。昨日の県内は久しぶりに太陽が顔を出した。梅雨は続くが、日々異なる雨の表情も結構楽しめると気付かせてくれるのが森下典子著「日日是好日」だ。

 大学生の頃から週1回通ったお茶の稽古を通して気付いたことを繊細な感性でつづる。最初は全くの初心者。同じ手順を繰り返す意味が分からず苦痛だったが「ある日突然雨が生ぬるくにおい始めた」。夕立の前だ。季節が音やにおいを通して五感に訴え始めた。

 「暑い季節」「寒い季節」の二種類しかなかったのが、春夏秋冬から二十四節気となり、さらに「毎週毎回が違う季節」に。「自分では見えない自分の成長を実感させてくれるのがお茶」。すべての感覚が解放される極めて濃密な時間だ。

 人は忙しさにかまけて「時間がない」とこぼしがちだが、豊かな時間とは何かを考えさせられた。今日は「時の記念日」。同書にも出るが「一期一会」は茶道に由来する言葉という。「これが最期かもしれない」という覚悟は時間への切実な思いに通じるだろう。

 12日に迫る米朝首脳会談。非核化を巡って決裂すれば再び膨大な無為の時間が費やされる。両者とも「これが最期」の覚悟で対面に臨んでほしい。お茶の心得がなくても、「きな臭い」においが遠のいたとはっきり分かる成果を期待する。

 日本はトランプ大統領に拉致問題の提起を念押ししたい。途方もない空白の時間を取り戻す機会だ。ちなみに「日日是好日」は、ここでは「にちにちこれこうじつ」と読む。黒木華さんら出演で映画化されて10月に全国公開されるそうだ。

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