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そっくりさん

2018年5月30日
 大国トメニアの独裁者ヒンケルと、ゲットーに住むユダヤ人理容師のチャーリーは互いに知らない者同士だが容貌はうりふたつ。映画では、チャプリンが一人二役を演じる。

 ヒトラー政権のドイツが欧州で勢力を伸長させつつあった時代に製作された「独裁者」。ひょんなことからヒンケルと入れ替わったチャーリーがラジオで「ご覧、暗い雲が消え去った。太陽が輝いている」と呼び掛けるスピーチはチャプリン自ら原稿を執筆した。

 暗殺を防ぐためにそっくりの替え玉がいるとされる北朝鮮トップの金正恩(キムジョンウン)氏だ。最近の米朝首脳会談を視野に入れた北朝鮮側の動きには、これまで通りの独裁者と話の分かるそっくりさんが日替わりで登場しているようで頭が混乱する。

 板門店での南北首脳会談で正恩氏と米大統領トランプ氏との米朝首脳会談が現実味を帯びた。だが北朝鮮高官が「米国がわれわれの善意を冒涜(ぼうとく)するなら会談を再考する」などと敵対的な言動で警告すると、即座にトランプ氏は書簡で正恩氏に「会談中止」を通告した。

 書簡を受けて、いつもの「ちゃぶ台返し」で全てご破算になると誰しも思ったが北朝鮮は「首脳会談は切実に必要だ」と低姿勢で応じた。魚心あれば水心ありというわけか、トランプ氏も前言を翻し、予定通りに開催する考えを示した。

 米朝首脳会談まで2週間。まだまだ予断を許さないが両首脳がシンガポールで交渉のテーブルに着くことを世界は望んでいる。話し合ったのは、そっくりさんの方だったのでは…と首をかしげるような「暗い雲が消える」結果になるといい。

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