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砂漠の王族と雨

2018年5月28日
 砂漠の国から来た王族が、日本で「あなたの国では地面から石油が湧いて出る。実にうらやましい」と言われたときの返答だ。折しも外は雨。王族は窓を指さしこう言った。

 「あのように空から水が落ちてくれるなら石油など一滴もいりませんぞ」。地下に埋蔵されている石油のことは資源と認識しても、空から降る雨を資源と考えている日本人は少なかった昔のことである。いやいや農業関係者以外は今もその頃のままかもしれない。

 九州南部がおととい梅雨入りした。雨のため県高校総体の総合開会式は屋内開催に。高校スポーツ最大の祭典は天候に悩まされることが多く、例年雨をうらめしく思うが今年に限っては少々の雨はこらえてくれ、とお願いしたい心境だ。

 硫黄山の噴火後、長江川が白濁した影響で、水を田んぼへ引けなくなった農家は厳しい状況に置かれている。だがさすが県内屈指の米どころ。まとまって降った雨を天の恵みととらえて「これで田植えができる」と前を向く農家のことをきのう弊紙1面で報じた。

 えびの市島内の内田博美さん。中学を卒業後から稲作に取り組んでいる超の字のつくベテランが、82歳にして初めて雨水のみを頼りに20アールの水田で特産のヒノヒカリを栽培する。日々空を仰ぐことになるだろうが、うまくいってほしい。

 水が天から与えられる貴重な資源であることを、砂漠の王族ならぬ米作りの一線から教えられた。長江川流域近くの金松法然に焼酎を供えればひとつ頼み事がかなうという。今の切なる願いはむろん、稲が実るほど適度な雨が降ることだ。

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