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史上最大の撤退戦

2018年5月25日
 春先ロンドンに行く機会があって、郊外の王立航空博物館を訪ねた。名所ではないが軍用機や戦争遺産をどのように展示、継承しているか関心があったからだ。入館は無料。

 第1次世界大戦からの軍用機を多数屋内展示。入館者は子連れの家族が多くてピクニック気分だ。まさかと思うような巨大な爆撃機やヘリコプターも並ぶ。しかしその陰に埋もれることもなく一番人気なのが第2次世界大戦中の小さな戦闘機スピットファイアだ。

 ドイツ軍の侵攻から守った活躍は、乗員の奮闘と一緒に英国人は敬意を込めて語り継いでいる。大戦初期にフランスからの撤退を描いた映画「ダンケルク」を見た後だったので、隣のドイツ軍機メッサーシュミットとともに感慨深かった。

 宮崎キネマ館で上映中(今日まで)の「ウィンストン・チャーチル」は先の映画の前日譚。1940年5月。ダンケルクに追い詰められた英国軍30万人をいかに救うか。交渉か決戦か。悩める首相が国民の声に触れて、決断力ある指導者に変身する瞬間が劇的だ。

 本県にとって史上最大の撤退戦を強いられるのが人口減少問題。県は2030年の目標値に100万人以上を掲げていたが、国の研究所による推計では97万7千人に。目標値の見直しに加えて実効性ある対策が喫緊の課題になっている。

 ダンケルクの撤退戦は“奇跡”の成功を収めた。温存できた軍勢は4年後、フランスに戻って大反攻を開始する。地方も一定の人口を下回っては攻勢に転じることができない。人的資源をいかに温存するか。知力と胆力が問われる正念場だ。

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