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逃げ場は族議員

2018年5月17日
 加計学園の獣医学部新設を巡り、火種はくすぶる。共同通信社が実施した世論調査によると、柳瀬唯夫元首相秘書官の国会での説明に「納得できない」が75・5%に達した。

 安倍首相は批判をそらすように、新設された獣医学部の入試倍率が好調だったとして「ゆがめられた行政を正した」と国家戦略特区の功績を強調する。だが「岩盤規制に穴を開けた」という口実に「あきれてしまう」と異を唱えるのが元鳥取県知事の片山善博さんだ。

 「獣医師の増えすぎを抑えるため、獣医学部の新設や定員増を認めない」という文科省の規制が岩盤なら変えればいいのに、その岩盤はそのまま。特区という特別扱いにしたのは「意中の人だけを通すのが目的だったとしか思えない」。

 「文芸春秋」6月号の前川喜平さん(前文科事務次官)との対談。前川さんも「規制緩和には程遠い」として、政治家が無理を通す「口利き的手法」を明かす。2人とも元官僚だけに官邸の言いなりになる官僚に厳しいが、人事権を抑えられた苦境に同情もする。

 おもしろいのは、いわゆる族議員がいなくなって「官僚の逃げ場」がなくなったという指摘だ。族議員は、業界団体へ利益誘導する悪いイメージで語られるが、困りごとがあると「じゃあ僕が一声かけておこう」と首相にも掛け合った。

 専門分野の知識や高い見識、影響力を持った人も多かったという。確かに本県からも「農林族」とされる議員がいなくなり、現場の声が政権に届きにくくなったようだ。官僚の衰退は案外、地方の地盤低下とも連動しているのかもしれない。

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