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血のひとしずく

2018年2月4日
 血液や尿の一滴でその人物のすべてが評価される近未来を描いた映画に「ガタカ」がある。元エリートの水泳選手から血や尿の提供を受けつつ主人公は宇宙飛行士を目指す。

 知力や運動能力まで血や尿で分かってしまうという世界は目下のところ映画の中にのみ存在するが、現在の医療レベルでも病気や病気の兆候はかなり早期に見つかる。合併症などで死に至る場合もある糖尿病や過度の飲酒による肝機能の異常や一部のがんなどだ。

 認知症の一種のアルツハイマー病の原因物質が、脳に蓄積しているかどうかを簡単で人体に負担をかけず調べられる検査法を国立長寿医療研究センターや島津製作所などのチームが開発したという。必要なのはわずかな量の血液だけだ。

 開発チームには、ノーベル化学賞受賞者の田中耕一さん(島津製作所シニアフェロー)も所属する。アルツハイマー病患者や健康な人を含む日本と豪州の60~90歳の男女計232人を対象に、この手法を使って調べたところ大がかりな検査結果と約90%一致した。

 高齢の認知症患者は国内で500万人以上もいるとされ、今後も増え続けて2025年には実に約700万人に達する見込みだ。アルツハイマー病はその6割以上を占める。患う本人も介護する肉親にとっても不安で悲しい病気である。

 動脈、静脈、毛細血管をつなぐと約10万キロ、地球2回り半のパイプラインを流れる血は情報の宝庫なのだろう。それで人間の能力を測るような近未来は御免被りたい。だが病気の治療や予防に役立つならば積極的に活用したい一滴である。

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