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相撲界の華

2018年1月31日
 江戸時代の相撲ファンがよく口にした川柳が「一年を二十日で暮らすいい男」だ。その当時、今風に言えばもてる男性の三大職業は火消し、与力、そして力士とされていた。

 本場所は年に2度それぞれ10日ずつだったので実働20日。掲句は、そんなうらやましい稼業の上、人気もあった相撲取りのことを詠んだもの。だが実際は巡業も厳しい稽古もあって昔も今も楽な仕事ではない(中江克己監修「川柳で読み解く『お江戸』の事情」)。

 角界でまた暴力絡みの不祥事が明らかになった。春日野部屋で力士同士の傷害事件が起き、加害者の有罪判決が確定していた。春日野親方は日本相撲協会の広報部長として元日馬富士関の暴行問題では当事者の調査や情報収集を担った。

 それが調査する側から「される側」に回ることになり不祥事対応に追われる協会運営に支障を来す可能性も出てきた。角界のダメージは計り知れない。兄弟子に殴られた元力士は顎がずれるほどの重傷を負い何を食べても味が分からない味覚消失の後遺症に悩む。

 力士に並んで火消しが人気職業だったのは「火事と喧嘩(けんか)は江戸の華」と言うほど火災が多発、火消しが活躍する機会が多かったからだ。とび人足も兼ねた「いろは組」の火消しは命をかけて火の中に飛び込み、家を壊して延焼を防いだ。

 不祥事の火の手があちこちで上がる相撲界だ。もはやいちいち水をぶっかける程度では追いつかない。江戸の火消したちのように先回りして防火地帯を作る荒療治が必要だ。このままでは真面目に体を張ってけいこする力士が報われない。

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