ホーム くろしお

賢治の理想郷と農業

2018年1月26日
 発表された芥川賞と直木賞の受賞作はどちらにも宮沢賢治と関連があった。偶然かもしれないが、没85年になるこの詩人、童話作家への関心はますます高まっているようだ。

 芥川賞の若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」は、内容は1人で暮らす高齢女性の独白だが、賢治の詩から採ったタイトルが女性の決意を象徴している。直木賞の門井慶喜さん「銀河鉄道の父」は37歳で没した賢治の波乱の生涯を父の視点から描いている。

 賢治を理解するには農業は大変重要な要素になる。なぜ慣れない農業に従事し農民に尽くしたか。自然と人間の関わりを追究するだけではなく、農業が必要とする人的なつながり、広がりが理想郷の実現に不可欠だったためではないか。

 農業は持続的な地域の発展にふさわしい産業だからだ。今日贈呈式がある宮崎日日新聞農業技術賞の受賞者を見ても、多くが人や地域資源の連携を図ることで、地域に活力を生む中核になっている。分かりやすい例がえびのエコフィード利用・増産推進協議会だ。

 養豚や稲作農家、酒造メーカーなどが結集。地域で生産した飼料用米と焼酎かすを養豚のえさに用いた「いもこ豚」はふるさと納税の人気返礼品となるブランドに成長した。安全性や質の高い肉を生産するため、さらに研修会を重ねる。

 飼料用米の作付面積は拡大し、安定的な供給も可能になった。風土に合う農業に努め、地域の企業や人が得意分野で補い合えば、お互いに発展する好循環が実現する。そこから文化的なつながりが生じることを賢治は理想としたのだろう。

このほかの記事

過去の記事(月別)