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あんべらしゅう

2018年1月12日
 昨日は塩の日だったという。戦国時代、塩の不足に苦しんだ甲斐国の武田信玄に宿敵である越後国の上杉謙信が塩を送った日に由来するとか。いわゆる「敵に塩を送る」だ。

 「あんべらしゅう」という愛すべき宮崎弁がある。「塩梅(あんばい)よく」がなまった言葉。塩梅は物事の具合や様子だが、元は料理の味を決める塩と梅酢のこと。それほど昔は塩が重要だった。「敵に塩を送る」美談とはほど遠いのが、カヌー競技であった禁止薬物の混入だ。

 東京五輪を目指す選手が7歳下のライバル選手に飲ませて、ドーピング検査で陽性反応を検出させようとした。世界的に薬物使用を根絶する機運が盛り上がっている時に日本選手のイメージを失墜させる残念な事件であり、責任は重い。

 一方でピークの年齢を越え、有望な若手が台頭してくると、追い落とされないために必死になる一線選手の苦悩も思う。思い出したのが「放浪記」で知られる作家林芙美子だ。流行作家になってからもライバルたち、特に女性作家の台頭に激しい敵対心を燃やした。

 中傷しただけでなく、仕事は全部引き受けて回さないようにした。寿命を縮めた一因とされる。文壇での評判は落ちて、太田治子著「石の花」によると、葬儀では葬儀委員長の川端康成が「故人を許してください」とあいさつしたほどだ。

 スポーツも芸術も実力が優先する。いつかは後進に抜かれる。例外だった日本の企業においても、年功序列が壊れて逆転現象が頻繁に見られるようになるだろう。どう対処すべきか。とりあえず「あんべらしゅうやって」としか言えないが。

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