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デブの国ノッポの国

2018年1月7日
 児童書として親しまれている「デブの国ノッポの国」に登場するそれぞれの国のモデルはどこなのだろう。本の著者アンドレ・モロワはフランス人で、19世紀末の生まれだ。

 ドイツ統一をめざすプロシアと、これを阻もうとするフランスとの間で普仏戦争があったのはモロワ誕生の少し前のことだった。敗れたフランスは国土の一部を割譲した。またドイツを主敵とし、激烈な塹壕(ざんごう)戦のあった第1次世界大戦にモロワ自身関わっている。

 小説では島名をめぐって戦争が起こり塹壕も登場する。勤勉で「食べるのは生きるため食べるために生きるのではない」とするノッポ国が勝ち、「美食こそ人生」の国を占領する。両国のモデルがどこかおよそ想像がつこうというものだ。

 勤勉はドイツ人と日本人の共通点とされる。だが今の働き方はかなり違う。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、ドイツは年間平均労働時間(2016年)が最も短く、日本の1・5倍近い労働生産性(労働時間あたりの国内総生産)を実現している。

 「同じ仕事をより短時間でこなすことが良いという価値観」がドイツでは浸透していることが日独の違いだと考えられている。「労働時間貯蓄制度」のような所定の時間を超えた残業がたまると休みに振り替えられる制度も後押しする。

 仕事に追いつめられた女性の死を教訓に働き方を変えねば、と気づいた私たちの国だ。小説の中のふたつの国はやがて相手を認め合い、互いの良い点を学んでいく。少しずつでも変えていきたい。勤勉で互助の心もある長所は残しながら。

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