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日本の翼という名の酒

2018年1月5日
 「日本の翼」で商標登録された純米大吟醸がある。昨年までで開催20回を重ねている宮崎の「大吟醸を楽しむ会」に参加する蔵元のひとつ加藤吉平商店(福井県)の銘柄だ。

 氷温で2年以上も熟成させるなど時間と手間をかけた酒で、政府専用機で初めて正式機内酒として採用された。その名の通り世界の空を飛ぶ日本酒。日頃はほぼ焼酎一辺倒の筆者だが、この正月2日、職場近くにあるデパート地階酒売り場で見つけて衝動買いした。

 日本酒も世界の空を飛ぶ時代だが、航空業界は「2030年問題」と呼ばれる深刻な懸念を抱えている。バブル期に大量採用された40代後半のパイロットが退職時期を迎え、旅客機を十分に飛ばせない事態が生じるかもしれないという。

 パイロットの養成には時間と金がかかる。中堅や格安航空会社にとって人員不足は既に待ったなしの問題だ。宮崎市の航空大学校など養成機関は定員拡充や学生への奨学金制度創設を含め、同問題を乗り切るため産学官を挙げた取り組みを急ピッチで進めている。

 さて衝動買いした「日本の翼」の感想だ。さわやかで、上品で、飲むほどに大空を舞うようなふわふわした感覚になり、大みそかの弊紙で読んだパイロットの「30年問題」への個人的な懸念は酔うほどに消え、空のかなたへ飛び去った。

 考えてみれば酒をつくる杜氏(とじ)の育成にも歳月を必要とする。熱意と素質と育てる環境がそろって心を酔わせる名酒が誕生する。30年問題で大事なのは数合わせに終わらないことだろう。日本の翼をさらに安全安心に。そんな機会にすべきだ。

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